大判例

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名古屋高等裁判所 昭和30年(う)297号 判決

原判決挙示の証拠によれば原判示公務執行妨害の事実は優に之を認定することができる。論旨は判示巡査堀脇武雄が被告人に判示収監状を示していないから公務執行妨害罪は成立しないというにあるが、

(一) 刑法第九十五条所定の公務員の職務の執行たるには公務員がその抽象的権限の範囲内で一応適法な職務執行としての一応の外形と実質を具へた行為の形態を具へることを必要とするが、如上の要件を害しない程度の形式上の瑕疵は、仮令その瑕疵が右職務の執行の法律上の効果に何等かの影響を及ぼす場合と雖も、前同条所定の公務員の職務の執行たるに妨げない。本件は津島警察署巡査堀脇武雄が検察官木村秀雄名義の被告人に対する収監状を携行、被告人居宅に於て同人に対し其旨を告げて、該収監状の執行を為すに際しての暴行で、右堀脇巡査の行動は前記の公務員の職務の執行たるに欠くるところはない。右収監状の執行に際して、仮に刑事訴訟法第四百八十九条第七十三条の規定に従つて之を被告人に呈示しなかつたとしても、之のみを以て本件公務執行妨害の成立を否定することは出来ない。加之原判決挙示の証拠によれば右収監状の執行に際し収監状を被告人に呈示したことを認むるに難くないので、結局論旨は理由なく採用出来ない。

職権を以て調査するに、原判決は判示事実認定の証拠の標目中に「被告人の当公判廷における判示照応の供述」を挙示しているが、原審公判調書によれば、被告人は原審公判廷に於て本件公務執行妨害の公訴事実に付ては巡査がおどしに来たと思つて乱暴したもので、公務執行妨害の意思はなかつたと述べて、本件公訴事実中公務の執行を妨害したことを否認していることは明らかであるから、公訴の全訴因に付て公判廷の自白ありとして其趣旨の証拠説明をしたことは理由にくいちがいの違法がある。

(二) 又原判決は法律の適用において、「被告人の判示所為は刑法第九十五条第一項同第二百四条に各該当するが、傷害の点については同法所定刑中懲役刑を選択し、右は刑法第五十四条第一項前段の一個の所為にして数個の罪名に触れる場合に該当するから、重い傷害罪の刑に従つて処断すべきところ」と判示しているが、刑法第五十四条第一項前段は「一個ノ行為ニシテ数個ノ罪名ニ触レルトキハ其最モ重キ刑ヲ以テ処断ス」と規定しているから、先ず刑法第九十五条第一項の公務執行妨害罪と同法第二百四条の傷害罪との刑の軽重を比較し、同法第十条により処断刑として重き傷害罪の刑を定め、然る後その傷害罪の刑中懲役刑を選択すべきであるから、原判決は法律適用の順序を誤つた違法がある。

(裁判長判事 高城運七 判事 柳沢節夫 判事 赤間鎮雄)

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